特集 おくすり比べてみました 知っておきたい!同種・同効薬の使いどころ
婦人科漢方
寺内 公一
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座
pp.104-110
発行日 2023年1月5日
Published Date 2023/1/5
DOI https://doi.org/10.15104/ph.2023010020
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医師627人を対象として行われた日本漢方生薬製剤協会の「漢方薬処方実態調査」(2011年版)によれば,「現在漢方薬を処方している」と答えた産婦人科医は全体の97%となっており,その割合は内科,外科,精神・神経科,整形外科,小児科のいずれよりも高くなっている1).また,同調査によれば,医師が漢方薬を処方する割合が高い疾患・症状として「こむらがえり」「急性上気道炎」「便秘」に続く第4位に「不定愁訴・更年期障害」があげられており,多くの産婦人科医がこの病態に対して漢方薬を処方している状況がみてとれる.
実際に治療の選択肢として,閉経期ホルモン療法(MHT)や向精神薬を提示した場合に心理的抵抗を示し,「よりナチュラル」な方法を求める患者は少なくない.また医師側にも,副作用リスクや各種検査に要する労力を考慮してMHTや向精神薬を回避する傾向がある.器質的異常を伴わずに多彩な精神身体症状を来す更年期障害患者の「不定愁訴」に応じて,症状ごとに処方を追加していけば,短期間のうちに多剤併用療法を余儀なくされる.身心一如の視点から多彩な精神身体症状を全人的なプロファイルとして一括して把握し,個々の患者にふさわしい少数の処方を選択する漢方治療は,更年期障害の病態によく適合しているといえるだろう.
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