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「急性期病院において認知症高齢者を擁護する」日本老年看護学会の立場表明2016(日本老年看護学会,2016)の現状分析において,医療全体の状況として効率・スピードを求める治療優先の医療があることが記載されている.認知症高齢者へのケアに関しては一般的に,本人のペースに合わせてていねいに関わることが推奨されているが,在院日数の短縮化が図られ,重症度の高い患者の入退院が繰り返される急性期病院において,看護職はいつも時間をかけて関わりをもてるわけではなく,本人の意思を尊重した認知症看護を提供したくてもできない場合が多くある.交代勤務や働き方改革も,認知症高齢者のとらえづらさやケアの継続性の難しさに影響を与えている可能性もある.こうした状況にある急性期病院だからこそ,各々の現場に適した方法で,認知症高齢者にとって適切なケアを提供するための取り組みを探求していくことが重要と考える.
筆者は入退院支援・地域医療連携センターに所属し,退院調整看護師として担当病棟と地域との連携を担いながら,認知症ケアチームの一員として活動している.認知症ケアチームでは院内ラウンドによるケアの提案や相談対応と併せて,せん妄の予防・発症時のケアの普及,身体拘束最小化などに取り組んでいる.認知症高齢者のベッドサイドには,自宅で使われていた時計やカレンダーが置かれ,入院した理由や場所が分かるような張り紙が用意されることが,最近では当たり前になってきている.その一方で,時計やカレンダーなどの物品を十分に活用できていないこともある.また,急性期病院の看護職が認知症高齢者の行動に気を取られ,その場その場の対応に精一杯となってしまう場面は,以前と比べても少なくないと筆者は考えている.こうした状況においては,認知症高齢者自身が入院生活においてどのような困りごとを感じているか,また,認知症高齢者にどのような力が備わっているかという視点を看護職が見落としてしまうこともある.そのため,看護職が認知症高齢者の生活に大きく影響している中核症状を適切にとらえ関わりのなかに落とし込むための支援や,認知症高齢者が感じている苦痛やニーズを想像し,それを感じ取れるよう看護職の感度を高めるための支援,そして短い入院期間のなかでも成果を実感できるような支援が必要であると考えている.今回,当院での取り組みを交えながら,急性期病院における認知症看護の課題について改めて考える機会としたい.
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