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Ⅰ.はじめに
高齢者が認知症を患っていても安心して地域生活を継続できるようにするためには,身体合併症に対する治療が必要になったときに,円滑に治療が受けられる体制を構築する必要がある.認知症の症状についての理解をスタッフで共有し,できる限り安定した状態で治療を受けてもらえるように施設や人的環境を整えることが重要であることはいうまでもないが,もう1つ重要な課題として,どのように治療方針を決定していくかという点が挙げられる.医療行為は本来,その侵襲について違法性を阻却するために本人の同意に基づいて行うことが法的に求められているが,認知症を伴う患者では,理解力や判断力の低下から,自身が受ける治療について,その効果やリスクなどを理解できない場合がある.海外では,認知症で判断ができない本人に代わって同意する代理人の制度を設けている国もあるが,わが国ではそのような制度はなく,成年後見人にも医療同意権は付与されていないため,医療現場の裁量に任されているのが実態である.認知症により治療への理解が不十分であることが疑われる場合には,同意能力を評価して治療内容に応じて同意の有効性について検討し,同意能力が不十分な場合には,親族や関係者,そして関わっている専門職で治療方針の決定を支援する必要がある.このようなプロセスにおいて,治療の内容を理解しているのみでなく,普段から患者の状態をよく知り,関係性を構築している看護師がチームで果たす役割は大きい.本誌掲載の論文において,すでに実践的な意思決定支援の手法について解説されていることから(伊東,2019),本稿では,このような場面で用いられる医療同意能力評価の方法と意思決定支援について神経心理学的,および老年精神医学的観点から解説した.
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