視点
世代間交流と地域づくり
藤原 佳典
1
1東京都健康長寿医療センター研究所研究部(社会参加と地域保健研究チーム)
pp.582-584
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102500
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はじめに
近年,人や地域の「絆」の重要性が再認識されている.こうした背景から,福祉や教育,地域づくりなど様々な分野で,ソーシャルキャピタルの醸成・多世代共生社会の有用性が指摘されている.その根幹にあるのが世代間交流と言える.
しかしながら,核家族化,プライバシー保護・匿名化のもと,コミュニティの崩壊が進むわが国においては,一度疎遠となった世代と世代をつなぐには,自然発生的でインフォーマルな交流のみでは不十分で,熟慮された「仕掛け(プログラム)」を要するとの指摘がある1).本稿ではこのような仕掛けを「世代間交流プログラム」と呼ぶこととする.地域では行政・NPOや住民により,世代間交流をテーマに多様な事業が企画されている.
ところが,世代間交流は,総論としては万人から推奨されるものの,具体的なプログラムとしては普及しにくいのが現実である2).
このような世代間交流プログラムの現状と課題を明らかにするために,筆者らは平成16(2004)年より高齢者ボランティアによる子どもへの絵本の読み聞かせを通じた世代間交流によるモデル事業“REPRINTS(Research of productivity by intergenerational sympathy)”を継続してきた3).
本稿の目的は,この実践研究の経験をもとに,世代間交流が普及しにくい理由について言及し,その課題を解決するための糸口を提示することである.
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