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わが国の歯科界が行っている世界に例のない8020運動の結果,平成23年歯科疾患実態調査では80歳で20本以上の現在歯(残存している歯)をもつ人の割合は38.3%,また80歳の1人平均現在歯数は13.9本となり,この値は上昇していく.2011年の80〜84歳までの現在歯数は,24年前の65〜69歳と同じ数である.現在歯数からみれば日本人は,15歳若返ったことになる.このような状況下で歯科医療は,う蝕や歯周病の治療を行い,治療しても保存ができない場合には抜歯して義歯を作製するといった健常者型歯科医療の割合は今後減少し,健常者型歯科医療から口腔機能の回復を主体とした高齢者型歯科医療に徐々にシフトしていく.健常者であれば,義歯を装着するとそれが道具として口腔内で機能するが,高齢者とくに後期高齢者になると必ずしもそういうわけではない.75歳以上になってくると唾液分泌機能,咀嚼機能,嚥下機能,発音機能,呼吸機能のうち複数の口腔機能が低下している患者が増加傾向にある.このような患者に日本老年歯科医学会は注目し,エビデンスの収集に努力しているところである.今後は,この口腔機能低下症の予防やリハビリテーションについての研究および臨床,そしてその教育が発展してくるであろう.
2015年に東京に居住する75歳以上の高齢者は約145万人であるが,10年後の2025年には190万人になり,そのうち30%の57万人が独居と予測されている.全国的にみると,平成26年度版高齢者白書では高齢者のうち独居の割合は,2015年には男性14.6%,女性22.6%と予測され,地価や人件費の関係で介護施設の建設が容易でない東京よりもその割合が低くなっている.いずれにしても,10年後には歯科医院に1人で来院できない高齢者が増加する状況になる.したがって訪問診療を行う歯科医師が必要である.しかし,健康な患者を対象とした治療体系からみて歯科医師を過剰とし,本年度も歯科医師国家試験の合格率を63.8%と意図的に下げているが,これは将来を見据えると誤った政策であろう.また超高齢社会に対応するには人材育成が重要課題である.しかし全国に29校ある歯科大学すべてに小児歯科学講座は存在するが,老年歯科学講座あるいは高齢者歯科学講座は少ない.今後は学会としてこの問題に取り組んでいかなければならない.
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