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アメリカやオーストラリアを旅したことがある方は多いだろう。都市には高層ビルが建ち並び,町と町の間は立派な道路だけが走っている。「ガソリンスタンドがなかったら」と思わずにはいられない区間が珍しくない。私が留学したスウェーデンもそのようなところだ。100km/時で走っているにもかかわらず,40分間も町に出会うこともなく,しかも対向車にすら合わないこともあった。こんなことが今の日本であるだろうか? わが国では,今のところ険しい山岳や小さな島を除いてほとんどのところに人家がある。欧米とは違い,ある意味ではどこでも安心して暮らせるところといえる。
現在,わが国の財政状況はきわめて悪く,数字的なものでは第二次世界大戦当時と変わらないという。そのため,急速に種々の改革という名の変革が進行しつつある。まず,平成の大合併と呼ばれる多くの市町村の合併が行われた。地方自治体の効率的な運営がその主たる目的であるが,そのため役所機能が集約化され,地域によっては公的なサービスが受けづらいことが発生しつつある。次に,三位一体改革という財源の地方移譲が進みつつある。これにより地方財政が圧迫され,公共事業の削減が進み,地域の経済を圧迫している。また,地方自治体で介護保険運営されることから,介護保険サービスの受給者が多い地方では介護保険費が上昇している。加えて,生活保護費の地方移譲や平成20年といわれる医療保険の地域移譲などが予定されている。このような変革により,地方は急速に住みにくくなっている。このままで変革が進めば,地方においては税収の不足と資産価値の下落が生じ,一方では社会保障費の居住者負担が増大することになる。その反面,都市部には社会資源の集中による利便性の向上,それに伴う産業の集中が進む。
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