日本老年看護学会第10回学術集会特集 シンポジウム
日々のケア場面での課題
東森 由香
1
1我孫子ロイヤルケアセンター
pp.20-24
発行日 2006年3月15日
Published Date 2006/3/15
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- 文献概要
はじめに
当施設では,介護・看護課の理念を「利用者の人格や自尊心を尊重し,その人らしい生活を大切にしたケアを目指します」と掲げている.この理念をもとに当施設の目指す介護者・看護者(以下ケアスタッフ)はどのような人であるかを考えてみると,「利用者の望む生活,叶えたい生活への実現に向け,本人の立場となり,その人ならではの思いや気持ちをもとに考え出されたケアを実践できる人」である.しかし,そうできていない現状がある.
ケアスタッフは「自立」「一部介助」「全介助」と,日常生活動作の枠の中で対象を捉えようとする傾向がある.例えば,身体の動きが伴わなければ,「意欲がない人・理解していない人・甘えがある人」であると判断してしまう.利用者の状態を見て,どうしてできないのかを考えることへと思考プロセスを進められないのである.こうした思考では,利用者各々が発した,一言・行動・表情・しぐさの裏にある「○○したい」「○○したいけれどできない」という思いを感じとれない.感じとれたとしても,その思いを実際のケアへと結びつけていく必要性までは感じえないだろう.
日々のケア場面にある「倫理の課題」とはこうした中にあると考え,当施設におけるケアの実態を通して問い直してみたい.
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