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はじめに
地域における老年看護を推進するには,地域特性すなわち人口分布,環境条件,地形,文化,風習(しきたり),人間関係,日常生活習慣,安全体制,行政などを考慮しなければならない.地域とは毎日の生活を営む生活圏,自分の所属感(コミュニティ)があるものと言われている.地域は都市,市町村などそれぞれ多種多様な形態,内容を包含している.ある地域に住む高齢者,斜面の多い山村で人口密度の低い過疎に,しかも古い伝統的な文化しきたりの中で,1日数本のみ走るバスが唯一の交通手段としている生活圏に,1人で居住している高齢者は,さまざまな問題を抱えている.こうした高齢者の現状を正確に把握,評価し,的確な援助をする必要がある.また,老年看護は社会情勢の推移を見極めながらすすめる必要がある.例えば,老年看護と密接に関連する介護保険制度は,民間業者の参入も許し市場原理を導入し,平成12年4月からスタートした.介護保険は利用者本位に利用されるものであり,介護保険の目的とする高齢者のQOLに添うための介護の支援とともに,介護不安・介護負担への対応および地域保健とどのように結びつけるかの視点も必要と考える.
高齢者を侵襲する種々の新興の感染症や結核など再興感染症も危惧される問題である.地域の産業から発生するダイオキシン問題など,健康に影響する問題も見逃しにできない課題である.また情報技術の活用を積極的に進めることも大切で,離島や過疎地の遠隔医療,在宅介護支援ネットワーク構築が在宅高齢者の脈拍,血圧などバイタルサインを送信することで遠隔健康管理が可能であり,有効な活用が期待される.
厚生労働省は21世紀における住民の健康づくりの指針である「健康日本21」を示した.地域ごとにそれぞれふさわしい目標値を設定し,地域の特性を活かし地域独自の計画を策定し実施することで効果があるとしている.健康づくりには住民の主体的参加を求めている.こうした厚生労働省の方針にも目を向けながら,老年看護は前向きに柔軟に対応し取り組んで行かねばならない.以下おもに医療施設から在宅療養へ,介護予防と健康づくり,介護保険制度の関連と介護支援専門員(ケアマネジャー),21世紀に向けての期待と展望を述べる.
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