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Ⅰ.はじめに
看護基礎教育は看護の概念に基づく実践力の育成をめざしている。しかし、対象者の状況に応じた援助を実践できるように教育するためには多くの困難がある。その背景の一つには、就学以前からの暗記を中心とした学習習慣を修正できないでいる従来の教育方法に問題があるように思われる。対象者の状況に応じた看護を実践するために不可欠な問題解決能力や自己学習能力などを育成するためには、与える教育をやめ、学生が主体的に取り組める教授−学習方法を看護基礎教育の初期段階から行い、就学以前からの学習習慣を修正する必要があると考える。
PBL(Problem-based Learning)は批判的思考、学習意欲、自律的学習スキルの向上などに有効であるとされる、学生を主体とした教授−学習方法である1)。日本の看護基礎教育においては10年ほど前から実践報告や有効性を評価する研究が報告されてきた2)。最近では継続したPBLの実践に対して、クリティカルシンキング3)、学習態度4),5)、対人関係技能6)などの側面から評価がなされている。1年生を対象にした実践もされている7),8)が、臨床事例を用いた実践はほとんどない。その背景には、入学直後の学生では臨床場面のシナリオは難しいのではないかという懸念があるように思われる。しかし、生活経験を活かす内容が多いという、看護の学習における特徴から考えると、入学直後学生であっても、臨床に即したシナリオから課題を見出し、学習することは可能ではないかと考える。また、学習初期段階から臨床場面に即したシナリオを用いたPBLを行なうことは、学習に対する計画性や、課題解決のための多面的な学習方法が、学習初期から身につくものと思われる。加えて、学習初期段階から臨床での看護場面を視野に入れ、看護職者になるための学習課題を意識しながら、知識体系を連続的に形成するよう学習をすすめることができると思われる。それゆえに、入学直後の学生に臨床場面に即したシナリオを用いたPBLを行なうことの可能性を検討する意義は大きいと考える。
今回は、入学直後学生が臨床に即したシナリオから学習事項を抽出できるかを明らかにすることを中心に、学び方の学習ができたか否かについて調査した。学習事項の抽出は、PBLにおける学習の第1段階目にあたり、これができなければ、それ以後の学習は進まない。よって、調査結果は臨床に即したシナリオに対する、学習初期段階の学生の学習可能性を検討するための資料となる。
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