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Ⅰ.緒言
「安楽」とは、「安全」、「自立」と共に看護ケアの基本的な概念であり、看護行為のあるべき方向性や目標を示す言葉として多用される。「安楽」の定義については、「全ての人間が追求する人間の基本的ニード」、「快適な状態の感覚、不快からの解放の感覚、教育、意欲、感動や再生の感覚」(Malinowski,et al.,2002)、「人の身体・心理・社会面における苦痛・強い不快などのない状態」(大森,1994)、「疾病と健康の連続体のあらゆる段階の中で起こりうる良い状態」(Tutton,et al.,2003)、「人間の尊厳を維持して個別的な生活様式や生活習慣に沿って、より人間らしい生活ができるようになること」(川島,1986)等がある。また、安楽な状態については、「できるだけ生理的に平衡な状態に近づけること」、「心身、環境の変化をもたらすこと」、「日常生活の中で選択できること」(川島,1986)とされている。このように、「安楽」という用語には、多義性、抽象性、固有性、臨床性、広範囲性、患者の主観性、快の感情などの特性があり、広い意味で定義され、抽象的なイメージが強い。
過去に看護実践場面において「安楽」という用語の意味するものを明らかにする研究が行われており(佐居,2004)、臨床看護師の多くが「安楽」について基礎看護学領域での学習内容を示した。また、安楽の定義には「日常生活を過ごすこと」に着目したもの、「安楽な体位」に関するもの、安全を第一条件に挙げているもの、「人間らしい」ことを前提にしているもの、ケアや技術に関するもの、精神面の安楽を言及しているもの等看護師一人ひとりの体験の中で概念化され、価値づけられて発展していくことが示されている。国外においては、「comfort」の概念分析が行われており、「より快適な状況であること」、「苦痛のないこと」、「個人の成長をもたらすこと」という3要素が明らかにされている(Kolcaba,1991b)。さらに、この概念分析の結果から、安楽の分類構成が示された。それは、安楽の4つの側面(身体的・心理精神的・環境的・社会文化的側面)と3つの感覚(Relief、Ease、Transcendence)からなる3×4のマトリックスで示されている(Kolcaba,1991a)(図1)。このマトリックスは、安楽の全ての形態を表現することができるとされ、看護実践場面における患者の安楽のアセスメントに用いられている。
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