Japanese
English
【巻頭言】
減災社会に寄与する災害医療
Contribution of Disaster Medicine to Resilient Society
河田 惠昭
1
Yoshiaki Kawata
1
1阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターセンター/京都大学防災研究所
pp.1
発行日 2007年5月31日
Published Date 2007/5/31
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7008200197
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わが国では、地球の温暖化に起因して異常な集中豪雨、豪雪、台風などが発生するという極端現象が現れやすくなっている。地震に関しても、巨大な被害となる首都直下地震や東海・東南海・南海地震などがいつ起きてもおかしくない状況におかれている。これらの災害が起これば、被害をゼロにはできない。したがって、減災、すなわち被害軽減をどのように実現するかが大変重要となっている。
災害の危機管理の視点から、被害が発生・拡大する過程を記述した最悪シナリオを想定することはとても大切なことと言える。そして、なぜ未曾有の被害が発生するかと言えば、この最悪シナリオを無視する、あるいは何も対策を立てずに放置する防災機関や関係者が存在するからだ。わが国のような先進国で未曾有の被害となるのは、いまや人災であると断言してよい。たとえば、2005年のハリケーン『カトリーナ』によるアメリカ合衆国ニューオーリンズを中心とした大被害は、直接的には陸軍工兵隊が作った杜撰なコンクリート製防潮壁の倒壊・破壊が原因であるが、関係者がそのような最悪シナリオは起こらないという思い込みが被害を拡大したことがわかっている。地震に関してもそうである。前述した首都直下地震は、死者が1.1万人、負傷者が24.7万人と想定されているが、実際には『人災』の要因でこの数字が数倍に増加する性質があることを理解し、しかるべき対策を先行しなければならない。
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