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はじめに
日本では毎年多くの自然災害が起こっている.これまでも各地を襲った大規模災害やこれから起こると予測されている災害を考えると,災害に対する意識を高めることは意義がある.この意識の一つに「防災」がある.防災は災害の被害を未然に防ぐために備えをする考え方で,「防災教育」や「防災グッズ」といった言葉が浸透している.
一方で,近年「減災」という言葉も意識され始めている.「減災」とは災害後の対応よりも事前の対応を重視し,できることから計画的に取り組み,少しでも被害の軽減を図ることである1).例えば,災害が起こった際,自身に避難する体力がなければ避難所に安全にたどり着くことができない.特に高齢者における初動対処時の身体活動能力は,最大の目標である「生存」に重要な影響を及ぼす2).体力の衰えた高齢者は避難に必要な歩行に支障をきたすことが考えられる.避難所までの道のりを歩ききるための体力を付けることも,減災の一環であると考えることができる.
そこで著者らは,歩行など減災に必要な体力を「減災体力」と捉え,災害の被害軽減を図るため,その向上を提案している.
一方,神奈川県秦野市では第4期「健康はだの21」の重点施策に運動習慣の確立を掲げており,将来的な要介護状態を遅らせるために,生活の中で意識的に体を動かし,日常生活の活動量を増やすことを目標としている.その中でも歩行は,多くの人が毎日実施している日常生活動作であり,避難時の移動にも欠かせない動作である.また,歩行の実践を継続することは,運動器症候群(locomotive syndrome)や生活習慣病などの予防につながることが期待できる.
そこで,2020年3月19日に,秦野市と東海大学体育学部との連携協働事業として「減災体力向上のためのウォーキング講座」を実施した(図1).本稿では,本講座の内容を中心に報告するとともに,新たな健康づくり,介護予防として,減災体力の向上を掲げることが可能か報告したい.
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