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Ⅰ.緒言
ディグニティセラピー(以下,DT)は,終末期患者の実存的苦痛を緩和する簡便な介入法としてカナダで開発された1)2).その手法は,患者がこれまでの人生について定型の質問項目(以下,質問票)を通して「自分の大切な人」に宛てて「自分にとっての大切なこと」を語り,永久保存記録の文書(以下,手紙)をつくる.そのプロセスを通じて,患者の過去を振り返り,自分が大切にしていること,大切にしている人への思いや希望などを再確認する数日で終結可能な精神療法的アプローチである.海外においては多くのランダム化比較試験が実施されており,精神的幸福2)〜4),尊厳を高める2)5)6),QOLの向上2)6)7),不安や抑うつの軽減5)6)8),希望3)4)7),家族の結束と適応3)などの効果が報告されているが,日本においては解説9)10)や会議録が多い.
また,DTは手順や手続きが構造化されており,この手法を行うのは臨床心理士などの心理専門家だけでなく,その理論や方法を身につければ看護師も実践可能とされている11).一方で,日本において総合病院の看護師がDTを実践しているという報告は少ない.筆者らは,総合病院の看護師が「死ぬのが怖い」など患者の実存的苦痛に触れ,その苦痛に対応できない困難感をかかえていることを明らかにしてきた12).そこで,患者の実存的苦痛の緩和と看護師の困難感軽減のため,看護師が実践するDTを総合病院に導入する研究チームを結成し,プロトコルや実践する看護師のトレーニング,課題を検討してきた13)〜15).今回,総合病院において尊厳の低下を表出した化学療法中の再発がん患者に対してDTを実践したので報告する.
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