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Ⅰ.緒言
第3期がん対策推進基本計画では,「がん医療の充実」という柱において「小児のがん,AYA世代のがん」が重要課題として取り上げられた1).Adolescents and Young Adults(以下AYA)世代とは,思春期にはじまり完全な成長および身体的成熟にいたる人生の期間を指し,最も広く用いられている定義では15歳から39歳までを指す2).AYA世代は,学生から社会人への移行,恋愛,結婚,子育てなど,多様な発達過程を経ながら,家族や社会のなかでアイデンティティを形成する年代である.この時期にがんに罹患することは,患者にとっては大きな衝撃であり,身体および精神的影響のみならず,社会的影響や成長発達上の影響も大きい3).厚生労働省は,AYA世代がんの課題への取り組みとして,その診療体制の検討,多様なニーズに応じた相談や就労支援,治療にともなう生殖機能などへの影響など,ライフステージに応じた問題について情報提供を行う体制整備を政策的に後押ししている1).第2期がん対策推進基本計画に成人がん患者に向けたピアサポートの必要性が明記され,以降,AYA世代のがん対策のなかでもピアサポートの重要性がいわれている.
ピア(peer)とは,「仲間」という意味である.ピアサポートの歴史を紐解くと,もともとは米国の公民権運動やゲイムーブメントなど,マイノリティーが力を得るために行われてきた運動において,その集団のお互い同士を表すために使われてきた言葉である.米国では,ピアという言葉は社会的に虐げられている当事者(consumer)と同義で用いられることが多く,そのマイノリティーである当事者が力をつけるために集結し,法律や政治活動の参加において使われてきた.近年では法律や政治活動からはなれ,医療保健分野のみならず,社会福祉や教育など,幅広い学問領域でピアという言葉が使われるようになった.ここでいうピアとは,単に当事者を指すだけの言葉ではなく,ピアサポート活動という文脈のなかで,当事者がお互いを意味づける言葉として使われる.ピアサポート活動は,当事者が相互に支援し合う活動一般をいう.がん領域においても,がん患者と同様の経験をもつ者による相談支援や患者同士の体験共有ができる場の重要性から,ピアサポートの普及が求められている1).
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