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Ⅰ.はじめに
わが国では1年間に約100万人が新たにがんと診断され1),患者数は増加し続けている.これに対して国はがん対策推進基本計画を進めており,がん医療従事者の育成は重点的に取り組むべき事項の1つである2).そのため,がん診療連携拠点病院ではがん看護の質の向上と教育が喫緊の課題となっている.
近年,医療技術の高度化への対応と看護の質向上,中堅看護師のモチベーションを高めることなどを目的に院内認定制度を設置する病院が増えており,多くの実践報告がされている3)〜9).がん診療連携拠点病院であるA大学病院では,この院内認定制度を各部署でがん看護の質向上に取り組む看護師の教育と質の保証のために導入することを検討し,『院内認定がん看護エキスパートナース(以下エキスパートナース)養成プログラム』を開発することとした.
がん看護実践能力の向上に向けては,日本がん看護学会が「がん看護コアカリキュラム日本版」10)の作成,「がん看護実践に強い看護師育成プログラム」11)の開発を行っている.しかし,院内教育で可能な学習内容の範囲や時間は限られており,優先的に学習すべき内容は各施設の特徴により異なるため,既存のものをそのまま使用することは困難である.そのため,プログラム開発にあたり,研究者らはA大学病院のがん看護の現状や課題を把握し,目標を明確にしたうえでプログラムを構築する必要性があると考えた.実情と課題の把握のために,看護師のがん看護に関する知識の評価と必要であると自覚している学習内容を明らかにしたいと考えた.しかし,それだけでは看護師の主観と関心のみが反映されたものになってしまうことを懸念し,組織を俯瞰する立場にある看護師長およびがん看護関連分野の認定看護師が,がん看護の質向上に必要と認識していることも明らかにして教育に反映させることが望ましいと考えた.
そこで,本研究ではA大学病院看護師のがん看護に関する知識の獲得状況と学習ニード,看護師長およびがん看護関連分野の認定看護師が不足または改善の必要があると認識しているがん看護の内容から現状と課題を明らかにし,院内のがん看護の質向上のために必要なエキスパートナース研修内容を検討することを目的とした.
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