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Ⅰ.はじめに
一般病棟におけるおもな看護業務には,診療の介助である「点滴管理」や「包帯交換」などと,療養の世話である「環境整備」や「清拭」などがあり,まず患者の命に直結する診療の介助が優先されるという現実がある.つまり,これらの多忙な業務に加え看取りのケアを提供するという「時間的なゆとり」のなさが一般病棟の課題である1).今回の研究対象病棟も同様で,おもに消化器疾患の急性期患者を看ている中でがん患者を看ており,終末期がん患者の対応には個々の看護師の裁量に任されている状況であった.そのため,看護師が終末期のがん患者にゆっくり関わりたいと思っていても,手術や治療など緊急性の高い,処置の多い患者のケアを優先的に行わざるを得ない場合があった.また,終末期がん患者および家族に静かに落ち着いた環境を提供しようとしても十分にできないことも多く,看護師からは急性期病棟の中で終末期看護を行うジレンマを訴える声がきかれた.特に,終末期がん患者の症状緩和だけでなく家族との関係性の難しさが問題としてカンファレンスに上がることも多かった.そこで,今までの終末期がん看護の家族ケアについて看護師自身の看護評価を行い,さらに家族との関係性について苦慮することが多い30歳未満の看護師に焦点をあてて30歳以上の看護師との違いについて調査を行った.30歳未満の看護師は,看護師経験年数が10年未満に相当し終末期ケア経験の少なさから,終末期ケアに対する知識および技術が不足しているため,患者ケアに無力感を抱いている,家族ケアに対する満足度も低いといわれている2).30歳未満の看護師が終末期がん患者の家族ケアに自信をもって向き合えるように具体的な方法は明らかにされていない.そのため,本研究では,吉岡ら3)が開発した終末期がん患者の家族支援に焦点を当てた看取りケア尺度の【悔いのない死へのケア】,【癒しと魂のケア】,【苦痛緩和ケアの保証】,【情報提供と意思決定のケア】,【有効なケアの調整】の5つの因子に分類されているものを用いて,家族ケア評価の年代間の比較をすることで,30歳未満の看護師の終末期がん患者の家族ケア支援への示唆が得られると考えた.
これらのことから,今回の研究目的は,一般病棟の看護師が行う終末期がん患者の家族に対する看取りのケア状況を数値化し,30歳未満と30歳以上の看護師の年代間での看取りケアの違いを明らかにすることである.
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