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Ⅰ.はじめに
患者がヘルスケアの決定過程に積極的に参加することは,その患者自身の満足度,自己調整感,自発性や自律性を高め,ケアの目標達成等に肯定的な影響を与えることが明らかにされている1~3).看護においても,看護計画の立案,実施,評価の過程を患者と共有するといったように,患者がケア実施の過程に関わることで,患者の自発的で自律的な言動が増加し満足感が高まることが示されており4~6),看護ケア決定に関する患者と看護者の共同関係の発展が期待されている7).
しかしながら,これらの考え方を実際の臨床の場において展開するには,様々な制限が伴うことが推測される.患者の中には,医療に関する十分な知識を有しなかったり不慣れな環境におかれるため,自分の健康問題に対するケア決定に参加することを好まない者も存在する8).また文化特性上,お任せ意識が強く,意思決定に関して西欧人よりもストレスが高いとされる日本人9)にとっては,積極的参加を期待されることは強制にもなりかねない.そこには,西欧的な自律の原理のみでは解決できない問題が存在しているのではないかと考えられる.
様々な程度においてお任せ意識をもつであろう患者に対して,どのように自律性を尊重しあるいは引き出しながら看護ケアをすすめていくかは,患者中心の看護を実現する上で重要な問題である.この疑問に答えるためのこれまでの研究は,患者の意識調査が中心であり,様々に変化する看護者との相互作用をふまえてその実態をとらえたものはみあたらない.
そこで本研究では,看護ケアの決定過程における患者参加について,特に「ケア主体者としての自覚」のあり様ついて記述することを目的とした.患者が自らの看護ケア決定過程に参加するかどうかは,患者が看護ケアを決めるということを自分のこととしてどのように受けとめその決定過程に関わっているのか,すなわち患者自身の「ケア主体者としての自覚」によることが大きいと考えられる.患者側からみた看護ケア決定について記述することは,日本人の特性にそった患者の主体性・自律性の発揮,満足度の高い体験へつながるより有効な看護ケアのあり方を考える上での一助となると考える.
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