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Ⅰ.はじめに
厚生省では,平成7年度から14年度までの障害者プランにもとづき,精神障害者社会復帰施設や精神科デイケアなどの大幅な拡充を計画している.特に,精神科デイケアは,通院医療の一部として,多くの精神障害者が利用し,全国的に普及している施設である.
従来の精神科デイケア(以下,デイケアとする)に関する研究で,デイケア利用による対人関係を中心とする生活障害の改善(鈴木,1984;Ralph J McGuire,1989;大山,1997)や,再発率の低下(西園,1995)が明らかになっている.さらに近年では,リハビリテーションの機能に加えて,より急性期の患者に対しての治療効果についても報告されている(Francis Creed,1989;1991).
その一方で,デイケアを長期間利用する利用者の増加が問題点の一つとしてあげられる(I.G.Pryce,1982;Robin G.McCreadie,1984;G.McGrath,1987;山崎,1992;濱田,1993;笠原,1995;塚原,1998).デイケアにおける長期利用者の増加は,新たな利用者の受け入れの相対的低下をもたらす重大な問題であり,デイケアにおけるinstitutionalizationを引き起すことも危惧されている.
日本における診療報酬上承認されているデイケア数は,平成2年に186箇所(財団法人厚生統計協議会,1991)であったものが,平成10年には883箇所(財団法人厚生統計協議会,1999)と急速に増加しており,全国のデイケアの80%近くが設置から10年未満の施設で占められている.この現状を考慮すると,長期利用者の増加は,今後デイケアの設置から年数を経るにつれ,多くの施設で共通の問題となる可能性は大きい.本研究の調査を行ったデイケアでも,開所から6年が過ぎ,活動プログラムやサービスが充実する一方で,徐々に中高齢者を中心に長期利用者の割合が増加していた.
デイケアの長期利用の要因としては,利用者の年齢の高さや利用開始時年齢の高さが共通して報告されている(Robin G.McCreadie,1984;G.McGrath,1987;山崎,1992;笠原,1995).また,独居や同居家族人数の少ない利用者においてデイケア利用が長期化しやすいとの報告もあり(Robin G.McCreadie,1984;山崎,1992;笠原,1995),デイケアの利用方法と利用者の地域社会生活とは密接に関連していることが予想される.
そこで本研究ではデイケアを利用している中高齢精神障害者に着目し,次の3点を目的とした.1)中高齢利用者のデイケア利用期間の実態を明らかにする,2)中高齢利用者の地域社会生活の特徴を明らかにする,3)中高齢利用者における地域社会生活とデイケアの利用期間および利用方法との関連を明らかにする.
デイケアでは多くの看護職者が活動しており,利用者の病気および生活を基点とした看護援助が求められている.デイケアの長期利用に関する問題を検討することは,デイケアにおいて,利用者と地域社会とをつなぐための看護援助の課題や,精神障害者の社会復帰に関して現在の地域社会に不足し,今後必要とされるサービスや対策を明らかにしていくために重要であると考える.
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