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Ⅰ.はじめに
医療の進歩に伴い,さまざまな薬剤の開発がすすみ,抗がん剤はその使用頻度や種類の増加,使用方法の多様化とともに,欠かすことのできない存在となっている(小川, 1999;高橋,2000).しかし,有効な薬理作用を有する反面,抗がん剤は正常組織への影響が大きく,重篤な副作用が出現することがある(国立がんセンター中央病院看護部, 2000).中でも抗がん剤の血管外漏出は,不幸にして発生すると,疼痛を伴う組織傷害を引き起こし,時に重篤な機能障害を残すことが知られている(石原, 1996;柳川,1998).このように抗がん剤の血管外漏出は,皮膚傷害という身体的なダメージに加え,疼痛からくる不眠,皮膚組織の傷害による運動制限など,患者のQOLにも大きく影響する.さらには,漏出部はいつ治癒するのかといった不安や再発への恐怖心を抱かせ,治療継続の妨げにもなり得る重要な問題である(国立がんセンター中央病院看護部, 2000;柳川, 1998).このため,化学療法に携わる看護職者は,その予防と早期発見に努める立場にあること,また発生時には迅速かつ適切な看護処置,観察が必要であることが強調されている(Berg, 1996;Goodman, 1997;Langhorne, 1997;Martin, 1996).
抗がん剤の血管外漏出については,予防のための観察ポイントや対処の仕方に関する具体的な看護ケアについて多くの報告がなされている(Berg, 1996;Goodman, 1997;Langhorne, 1997;Martin, 1996).しかしながら,一般的に抗がん剤漏出時の皮膚傷害の程度は,その種類,濃度,漏出量によって異なる(石原, 1992;Berg, 1996)といわれているにもかかわらず,実際にはその傷害性の程度を組織学的に裏付けるデータはほとんどない.科学的根拠に基づく看護ケアを実践するためには,抗がん剤漏出部の質的変化(組織学的変化)について理解を深める必要がある.
そこで本研究では,タイプの異なる各種抗がん剤の血管外漏出による皮膚傷害について,ヒト皮膚組織での検索は困難であるので,実験動物(ウサギ)を用いて,その程度について肉眼的観察とともに組織学的検討を行った.
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