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透析患者では,腎性貧血,MIA(低栄養・炎症・動脈硬化複合)症候群,骨格筋減少・筋力低下,骨格筋機能異常,運動耐容能低下,易疲労,活動量減少,QOL低下などが認められる.さらに,透析合併症や超高齢化に伴う併存疾患や透析合併症による重複障害により安静を保つことで,運動耐容能はさらに低下し,廃用症候群に陥ってしまう.実際,透析患者の運動耐容能は心不全患者や慢性閉塞性肺疾患患者のものと同レベルまで低下している.
腎臓リハビリテーション(以下,リハビリ)は,腎疾患や透析医療に基づく身体的・精神的影響を軽減させ,症状を調整し,生命予後を改善し,心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として,運動療法,食事療法と水分管理,薬物療法,教育,精神・心理的サポートなどを行う,長期にわたる包括的なプログラムである.腎臓リハビリの中核をなす運動療法は,透析患者の運動耐容能改善,MIA症候群改善,蛋白質異化抑制,QOL改善などをもたらす.定期的な運動習慣のある透析患者では明らかに生命予後がよいこと,週あたりの運動回数が多いほど生命予後がよいことが明らかになっている.さらに,定期的な運動習慣をもつ透析患者の割合が多い施設ほど,施設あたりの患者死亡率が低いことも報告されている.透析患者の心血管疾患に対するK/DOQI臨床ガイドライン2005年版には,「医療関係者は透析患者の運動機能評価と運動の奨励を積極的に行う必要がある」と明記されている.
透析中の運動療法を行う施設も増加してきた.週3回の透析の際に運動療法を行ってしまうことで,透析以外の時間帯に改めて長い運動時間を設定しなくてよいので,退屈な透析時間をどう過ごすか悩んでいる透析患者にとっては,非常な朗報であるといえる.
さらに,保存期CKD肥満患者や保存期CKD冠動脈疾患患者で,運動によってeGFRが改善することが明らかになってきた.このように,腎臓リハビリで透析患者はもちろん,保存期CKD患者も若返ることが可能である.
2011年に職種を超えた学術団体である「日本腎臓リハビリテーション学会」が設立され,2012年にわが国のみならず,世界初の腎臓リハビリの成書である『腎臓リハビリテーション』(医歯薬出版)が発刊された.今後,さまざまなCKDにおける長期的運動の有効性の検討やその機序に関する検討,至適強度や期間に関する検討が慎重に進められ,早期に十分な科学的根拠に基づいた腎臓機能障害者に対する運動指針が作成されていくものと期待される.皆様の積極的な参画をお願いする次第である.
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