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Ⅰ.緒言
わが国では,1972年から慢性期血液透析療法に関して更生医療(2006年の法改正により自立支援医療に統合)の適応が開始され,年々患者数が増加している.日本透析医学会による2009年12月の調査で,慢性透析療法を実施している患者数は290,675人であることがわかった.これは前年度より8,053人の増加であった.透析導入時の平均年齢は65歳を超えており,現在は75歳以上の透析患者の総数は73,565人であり,全体の26.2%を占めている1).原疾患の変化は全身性の合併症をもつ患者の増加を示しており,透析医療の現場では,高齢化する導入期の患者や要介護状態にある患者,重篤な合併症による終末期の患者が増加している現状により2),業務の煩雑さやケアの困難さが推測できる.
高齢透析患者を長期にわたり在宅で管理することは,合併症を予防して生存率を改善するために重要であるが,そのことによる患者の苦痛は大きい3).特に血液透析療法を受ける患者は,毎日の生活において水分や食事の制限,透析療法を受けるといった時間的な拘束を半永久的に継続しなければならない.一般的に慢性疾患の特徴として,完全に治癒することはない・長期間の医療を必要とする・患者自身の治療への参加が求められる・生活習慣の変更が求められるということがあげられる.日常生活にさまざまな制限を受けることにより,患者にとっては大きなストレスとなりうる4).また慢性疾患をもつ高齢者では,身体機能の衰えや病状の進行からくる活動性の低下が,地域社会との交流を阻害していることもある.高齢者全体では8割の人が生きがいを感じているが,友人がいない人では4割,近隣との付き合いをしていない人では6割にとどまっており,社会的孤立は生きがいや尊厳といった高齢者の内面にも深刻な影響をもたらしている5).地域における生活を維持するためにも,看護師の専門的支援が必要ではないかと推察したが,実態を調査した先行研究はなかった.
そこで本研究では,後期高齢血液透析患者の訪問看護利用実態を調査し,現状を考察することを目的とした.
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