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Ⅰ.はじめに
「透析患者の高齢化,糖尿病性腎症患者数の増加,長期透析患者数の増加により多種の内服薬を服用している患者が多く」1),特に高齢者においては,「理解力の限界・家族の協力体制などの問題」2)が加わり,服薬行動におけるセルフマネジメントへの医療者の介入は重要となっている.
当施設では外来維持透析患者を対象に,服薬行動の実態把握を目的として毎月残薬調査を行っている.残薬調査は,患者の認知機能をふまえた聞き取り調査および服薬の実態(用法・用量を守って飲むことができているかなど)を適宜評価しつつ,個別化した服薬指導に取り組んできた3,4).
英国王立薬剤師会は,服薬におけるノンコンプライアンスの背景を調査・研究し,患者と医療専門職との新たな関係のあり方として,「コンプライアンス」という言葉から,今後は「コンコーダンス」という言葉を使うようにと提案している5).
コンコーダンスは『患者との協力関係に基づく薬の処方と使用のプロセス』や『患者の価値観やライフスタイルに,患者にもたらされる医療や福祉のあり方が調和する』と定義されている.「医療者の考えに従ってもらうための積極的患者の参加」というコンプライアンス,アドヒアランスの考え方は,救急や急性期の医療では現実的な解決方法として必要とされる.一方,回復期以降の慢性期には,患者の将来像を見すえたライフスタイルと医療との調和をはかるため,医療者と患者が対等な関係で意思決定にかかわることを重視したコンコーダンスを用いることが必要である6).
慢性期に相当する維持透析患者への看護に従事するにあたり,コンコーダンスの理念は患者とのかかわりとして相応しいと感じ,ライフスタイルの一部である服薬行動の支援にその理念を導入したいと考え,コンコーダンス・スキルを用いた服薬援助を行うことにした.
コンコーダンスを目指すには,6つの鍵となる介入(患者と医療者の両者,または医療者に治療的な意図があって行われるかかわりの一単位)と21のスキル(介入や通常のコミュニケーションを行う際に実施される,かかわりの技術)を活用することが必要である(表1,2)7).
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