【実践報告】
1.認知症で身寄りのない高齢透析患者の「成年後見制度」活用事例
山西 育子
1
1博仁会キナシ大林病院
pp.77-82
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100384
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Ⅰ.はじめに
成年後見制度1)とは,家庭裁判所が法律の定めに従って,精神上の障害により判断能力が不十分な者について,契約の締結や取り消しを本人に代わって行う代理人など,本人を援助する者を選任して,これらの者を保護する制度である.禁治産制度を引き継ぐ形で平成12年4月から施行された.「法定後見」(民法)と「任意後見」(任意後見契約に関する法律)からなっている.
法定後見は判断能力の重度な順,つまり弁識能力を常に欠く「後見」,著しく不十分な「保佐」,不十分な「補助」の3つの類型に分類される(表1).任意後見は本人があらかじめ締結した契約(任意後見契約・任意後見人の選任)に従って本人を保護するものである.
透析患者の高齢化が進むなか,当院でも認知症を合併している透析患者は約10%にまで達している.1人暮らしで身寄りがない高齢維持透析患者の場合,突然に判断能力が低下すると生活の場を失い,外来通院も困難な状況に陥る危険性が高い.判断能力の低下や欠如は,生活上,治療上の契約が結べなくなること,つまり金銭面での運用に困難を生じ日用品の購入すらできなくなり,治療の方向性の決定困難につながっていく.
今回,身寄りのない高齢透析患者で判断力が急激に低下した症例の看護を経験した.初めて成年後見制度を利用するにあたって,珍しい市町村申し立て(成年後見事件全体の3.7%)を行った.このような症例の生活の場・治療環境の整備の今後について,成年後見制度の任意後見の利用や事前指示書の必要性も含めて考察した.
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