【実践報告】
1.透析室における結核菌曝露事態発生時の後ろ向き研究―院内感染対策上の発生時の対応を中心に
岩永 喜久子
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻
pp.75-80
発行日 2006年11月15日
Published Date 2006/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100277
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緒言
結核は一時減少していたにもかかわらず1),1997年に38年ぶりに増加に転じ,1999年には「結核緊急事態宣言」が発せられた.現在,わが国最大の感染症として蔓延し1),学校2)や医療施設などにおいて集団感染をおこし,再興感染症として問題となっている3).わが国で新たに発生する結核患者4万人の約80%が医療機関で発見され,集団発生の場所も同じように医療機関であった4).排菌者は診断が確定するまで誰にも気づかれず,結核菌を周囲に飛散させている可能性があるとされている5).そのため,院内感染における感染者の80%が看護職などで占められている5)ことや,感染源を患者とした看護師の発病や死亡例6)なども報告され,職業感染として懸念されている.
一方,わが国における透析は,閉鎖された一室の透析室に約10~50名の患者を収容し,一斉に行われている.今日,結核患者に対する空気感染予防策は遵守され,感染の問題はなく透析が行われているところである.しかし,ひとたび肺結核である透析患者に結核と診断されないまま透析が行われた場合には,結核の集団発生へとつながる危険性が高い.そして,わが国における2004年の透析導入患者の死亡原因は,感染症が23.6%と最も多く,なかでも高齢透析患者の結核は増加している7).本研究実施施設と関連病院においても,60歳代~70歳代の高齢者に増加がみられた8).
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