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Ⅰ.緒言
透析人口は,糖尿病患者の増加とともに今後も増加すると考えられる.現在の糖尿病患者のピークは60~65歳にあり,今後老齢透析患者の増加が予測される.すでに老齢透析患者の病人役割行動上の諸問題は指摘されている1~3).一方,筆者らの壮年期透析患者のセルフケア能力に関する研究結果4,5)からは,疾病のコントロールのための病人役割行動はとれているが,仕事役割優先の生活のなかで絶えず緊張し続けている傾向にあった.これらの状況は発達段階からの特徴と考えられる.また透析患者は導入前にすでに慢性疾患をもち,病人役割行動を継続してきている.そのためには生活のなかでさまざまな折り合いをつけ,慢性疾患をもつ自己を受け入れていると思われる.しかし,透析導入は再度新たな生活の修正を迫られることから,「透析の受け止め方」が,透析生活を送るうえでの「病人役割遂行」に影響を与えていると考える.
いうまでもなく,透析導入に伴う看護の役割には,透析療法の理解や食事療法を中心とした教育的かかわりが中心になっている.これらは透析患者が病人役割遂行をするために必要である.しかし生涯にわたる疾病のコントロールをするためには,行動変容のための働きかけが必要になる6).行動変容は,疾病のコントロールのために生活を修正し,再構築を行う際に生ずる心理的状況をもコントロールすることを意味する.Straussは慢性疾患とともに生活するうえでは,“常態化”すなわち「自分は健康な人と何も変わらない」と振る舞うことを試みる.一方で慢性疾患を隠すことに失敗すれば,社会的損失のみならず他者との相互作用を阻害する可能性もある.また,これらの心理社会的な影響は,自尊心の低下や不安,社会的疎外感を引き起こし,病人役割遂行にあたって障害となりうる7)と述べている.
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