【研究報告】
2.透析導入に伴う病人役割遂行に困難を要する患者への看護師のかかわり―ロイ看護論の役割機能様式の視点から(第二報)
仲沢 富枝
1
1山梨県立看護大学短期大学部
pp.68-74
発行日 2002年11月15日
Published Date 2002/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7003100121
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Ⅰ.緒言
慢性疾患をもつ患者への看護の役割は,一般的に次の3点に集約されている.まず①教育的役割,次いで②支持的役割と③調整的役割である.血液透析患者への看護の役割も当然同様にみることができる.透析導入にあたって,とりわけ看護の教育的かかわりは,以後長期にわたる透析生活を支える意味でその責任は大きい.先に,発達段階から老年期と壮年期別に透析する自己の受け止め方と病人役割遂行1)について報告したが,多くは透析導入後1年余経過するなかで,発達段階における役割と病人役割行動とを調整して病人役割遂行がなされていた.しかし,壮年期では病人役割過剰遂行の人,仕事役割と病人役割間葛藤をいだいている人,役割克服困難の人などが見受けられた.そこで本報告は,これらの事例に対して望ましいと考えられる具体的な看護師のかかわりを検討しようとするものである.
今日,従来の医学モデルを中心としたコンプライアンス行動を目指した看護の教育的かかわりは,患者の行動変容を期待することに困難があると指摘されている.「ナースのための患者教育と健康教育」に示される「伝統的教育モデルとエンパワーメント教育モデル」2) に代表される次のような考え方が提案されている.この書のなかではいくつかの学習理論3)について述べている.それは行動主義の考え方に基づくもの,認知論の考え方に基づくもの,ヒューマニズムの考え方に基づくもの,セルフケアと自己効力感理論に基づくもの,である.いずれの立場をとろうとも,健康を支える学習や教育には複雑な要因が絡み合っていることもまた事実である.
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