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第3次AI(artificial intelligence:人工知能)ブームと言われて久しく,日々AIに関するニュースを目にすることも多い.しかし,AIとは何かと問われると,実は明確な定義がなされていない.AIの定義の一例を示せば,一般社団法人 人工知能学会の設立趣意書では,人工知能とは『大量の知識データに対して,高度な推論を的確に行うことを目指したもの』とされている.総務省が報告した日米におけるAIのイメージに関するアンケートでは,『コンピューターが人間のように見たり,聞いたり,話したりする技術』という項目では,日本35.6%,アメリカ36.9%と同様の傾向を示したが,『人間の脳の認知・判断などの機能を,人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術』では,日本26.3%,アメリカ42.3%,『コンピューターに自我(感情)を持たせる技術』では日本27.4%,アメリカ19.7%と差を認めており,そのイメージも一様ではない.
人工知能の歴史は,1956年のダートマス会議における提唱から始まるとされており,1960年代,1980年代,そして2000年代と3回のブームを認めている.第1次AIブームでは,それまで単なる計算しかできなかったコンピューターが「推論」や「探索」などを行うことが可能となり,迷路やパズルなどの単純な問題を解くことができるようになった.しかし,当時のAIの機能では,様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり,その後の冬の時代を迎えた.しかし,この時代にすでに,現在のAIの基礎となるような自然言語処理やニューラルネットワークといった技術が登場していることには着目すべきである.第2次AIブームでは,専門家の「知識」をAIに与えることにより,その専門分野における回答を出すエキスパートシステムが登場した.医療分野においても,いくつかのエキスパートシステムが登場し,例えば“Mycin”は細菌感染の診断を行うシステムで,その使用すべき抗生剤を推奨し,その正解率は約65%だったとされる(Yu et al.,1979).しかし,エキスパートシステムでは,あらかじめ大量の答えをコンピューターが処理できる形で入力する必要があること,世の中のすべてのことに答えがあるわけではないことなどにより,そのブームは去っていった.現在の第3次AIブームにおけるキーワードは,1. 機械学習,2. ディープラーニング,3. ビッグデータである.機械学習とは,大量の知識データ(ビッグデータ)をもとにコンピューターが自ら学習する技術である.この自ら学習するというのが,これまでの技術とは大きく異なったものである.またディープラーニングとは,機械学習の手法のひとつであり,神経細胞を模したニューラルネットワークを発展させることにより,より深く学習をすることのできるシステムである.
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