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糖尿病の治療には,セルフケアが大きな要素を占める.セルフケアを促進させるには,その前提に患者が明確な病識を持ち,自己決定性の高い(自律性の高い)動機づけを持つことや,セルフケア行動に対する自己効力感が血糖コントロール指標の改善と関連があると報告されている.
患者の「自己決定(自律性)」とは,自己自身の目的と価値観に従って,自分が善いと考える「価値」を選択,決定,実現することといえる.医療における患者の自己決定とは,自己の生活,人生の目的に重大な影響を与える医療において,自己の価値観に従って,最善と思える決定をすることを意味するとされている.患者の自己決定が尊重されることは,人格が尊重されることであり,高齢であることで,本来だれもが持つ患者の権利である意思の尊重が脅かされることがあってはならない.しかし,現状では病状の説明や治療に関する情報提供が家族を中心に行われ,当事者である高齢患者に医療行為に関する情報が与えられなかったりする.その結果,患者本人の意思を表出する機会が奪われ,本人よりも家族の意向が尊重され,本人の最善と思える決定が奪われる結果となったりする.また,認知症がある患者では,意向自体がつかめないとの医療者の判断から,当事者の意思の確認を軽視したりするケースもみられる.さらに,高齢患者は介護する家族への配慮や気兼ねから家族の意向を自らの選択として表現する場合などもある.その他には,療養の場の選択についての意見の衝突が本人ではない家族同士や専門職同士等である場合もある.到来する超高齢社会では,これらの意見調整を求められる機会がさらに増加し,今後は,高齢患者の心身の特徴に配慮した擁護者としての調整役割発揮がますます求められると予想される.
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