増刊号特集 泌尿器科外来診療—私はこうしている
Ⅹ.メディカルエッセイ
バイアグラ余(夜)話
福井 準之助
1
1聖路加国際病院泌尿器科
pp.98
発行日 2000年3月30日
Published Date 2000/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902898
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20世紀末に「男性の夢の薬?」が開発,発売され,勃起不全に悩む男性に大きな福音をもたらした。この薬の有効性が研究段階で公表されたとき,開発薬品メーカーの株価がウオール街で急騰し,新聞紙上を賑わせたことも記憶に新しい。男性の性機能,特に勃起機能は個人差があるとはいえ,加齢とともに減衰していく。勃起機能の回復を願う気持ちは年齢に関係なく,機能の減衰〜喪失した全男性に共通する切なる願いであり,その機能低下の悲哀は男性にしか理解できない。
医師がバイアグラを処方するとき,薬物の副作用のみに眼が向きがちであり,バイアグラ服用による周辺への影響に対する指導が疎かになりやすい。筆者の経験した事例を挙げながら,話を進めたい。60歳後半のA氏は前立腺癌のため根治的前立腺摘除術を受けた後,術前に告知されたように勃起が消失した。しかし,術後1年半を経過したある日,「先生,時々早朝時に陰茎が硬くなっていることに気づくようになりました。でも,性交渉ができるほど固くはならないのですが……」と勃起機能の経時的な回復に大きな期待を込めていたが,それ以上の改善は得られなかった。そして,術後24か月経過したときに,バイアグラが発売された。本人の強い服用希望と,循環器検査を含めた諸検査で異常がなかったので処方したところ,2週間後に来院し,「バイアグラを服用後にかなり固く勃起したので,妻と性交渉を持つことができました。挿入に手間取り,妻も痛がったのですが,数年ぶりの性交渉で満足できました。
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