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糖尿病患者が知識を活用して自己管理行動を起こすためには患者の自己効力を高める必要があるといわれている.そこで,患者が認知している自己効力と専門家が判断している患者の自己効力について帰納的に明らかにすることを目的に調査を実施した.対象は糖尿病患者13名と看護婦9名,栄養士9名である.患者に対しては筆者が面接調査を実施し,専門家に対しては,自由記載のアンケート調査を実施した.結果は内容分析の手法を用いて分析した.患者面接の内容分析の結果は,「知的に対処できる自信」,「自分の食欲求に対処する自信」,「社会生活と食事療法の両立の自信」の3カテゴリーに分類できた.このうち,「知的に対処できる自信」に含まれるアイテムが最も多く,専門家から提供された知識を生活の場に適用して自分なりに工夫したり考えて食事をとることができたときにこれからもやっていけそうだと自信を感じることが多いことがわかった.専門家アンケートの内容分析の結果は,「感覚的対処の自信」,「知的に対処する自信」,「社会生活での対応」,「周囲の人の協力」,「モニタリングする自信」の5カテゴリーに分類できた.このうち,「感覚的対処の自信」に含まれるアイテムが最も多く,専門家は患者が糖尿病の食事療法を感覚的に身につけて実践できるようになったときに自己効力があると判断していることがわかった.患者インタビュー結果と専門家のアンケート調査結果を比較すると,患者は専門家からの指導内容を具体的な食行動としてとらえ,そうした細かい食事療法に関する注意事項を守れたときにできそうだという自信を感じることが多いが,専門家は患者が示す実際の行動や医学データなどからその患者ができそうかどうかを判断していることがわかった.このことは,患者は専門家からの指導内容(知識)を自分の生活のなかで具体的な食行動として実践してみることで初めて自己効力を感じるということを示唆している.また,専門家は患者の行動化の前提としての知識ではなく,行動を起こす患者の認識や実際の行動・データを根拠にして自己効力を判断していることが示唆された.
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