- 文献概要
自分たちが蓄積してきた知識や技術を,次世代を担う若者たちに伝えることが教育の主要なねらいであるが,伝えるべきことは知識体系の他にもまだある.「こうあって欲しい」,「こうあるべきだ」とする思いや願いもまた教育の場で伝えられなければいけない,そういう意味で教育を問うことは,我々が従事している仕事そのものを問うことにも繋がる.ここ数年,養成校の急増や大学院課程の新設など,作業療法士の養成を巡る状況に大きな変化が見られる.そしてその変化に伴い教員不足,臨床実習地確保,教育の質など教育課程に関わるいくつかの間題が浮かび上がっている.その中には,作業療法士間の合意によって解決できるものもあれば,他職種との連携が求められたり,さらには社会全体の仕組みの中でしか解決しない問題もある.いずれにしても,このような問題の解決には従事する者の間で問題が共有され,問題の背景理解に一定の共通項が存在することが不可欠と思われる.それにはまず作業療法士自身によって問題が洗い出される必要がある.そういう意図の下,本特集「作業療法士の養成教育—現状と問題点—」が企画されている.
いうまでもなく,作業療法は実践に向けられた学問である.知識や技術の獲得は生涯にわたって継続され,追求されるべきものではあるが,本特集では卒業前教育に照準を定めている.このような学問においては,臨床の経験が知識としてまとめられ,まとめられた知識が実践の場で試されることが理想であり,知識と技術はいわば車の両輪となる.本特集においても,学校教育の場と臨床の場で教育に携わる人々の両方から意見を伺い,この問題の深い理解に繋げたいと考えている.
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