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はじめに
作業療法士は,日々の臨床実践において種々の作業活動を用いるのが普通である.
ところで,1985年(昭和60年)(社)日本作業療法士協会では,作業療法は,「作業を用いて,治療,指導及び援助を行うこと」であると正式に定義づけを行った.そして作業には,「日常生活活動」,「仕事・生産的活動」,「遊び・余暇活動」等が包含されるとした.つまり作業療法士は,人間が生きて生活を遂行する際の「ありとあらゆる作業」を,治療や指導,援助に適用して行こうとする職種であることを内外に示したのである.
もちろんこのようなことについて,作業療法の先人達は先刻承知であったのであり,事実,秋元・冨岡1)は作業療法の先人の知恵を縦横無尽に紹介している.逆に考えれば,これら先人達の知恵をベースにして,前述のような定義づけに至ったのだと考えても,そう大きな間違いとはならないであろう.
ところで近年,園芸,音楽,ダンス,レクリエーションといった,「活動を用いる治療援助法」が注目を集めている.上記の文脈から考えれば,至極当然の動きであるという,ある種皮相な見方も可能ではあるが,それほどに「単純な動き」ではなさそうである.というのも,種々の認定資格=○○療法士が既に幾人も誕生してといるようであるし,これら認定資格を取得済みの,あるいは取得しようと準備している作業療法士も相当数存在しているようだからである.
しかし,これらの動きの活発化と裏腹な形で,現場レベルには素朴だが看過できないと考えられる疑問が,依然残されているように筆者には感じられる.順不同で列挙してみると,表1のようにまとめられるだろうか.
さらに言えば,これらの疑問に対する回答は簡単なようで実は難しい内容をはらんでいる.つまり現場を知る作業療法士であれば,この問題が表2に示すような,「古くて新しい問題」を私達に投げかけているのだということを,容易に気づかせてくれるのである.
そこで本稿では,活動を用いた治療援助法と作業療法に関するこれら諸問題に対して,読者が総論的な展望を得るために,主として,①補完・代替医療,②専門職論,③臨床経済学の各視点から論じることとした.
本稿及び他の4氏の論文によって,活動を用いた治療援助法と作業療法に関する議論を臨床現場のさまざまなレベルで巻き起こすことができれば,本特集の任務は一応解かれることとなる.
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