◆特集 アフォーダンスと臨床
アフォーダンスと作業療法—Gibson3著作の展開を追って
佐々木 正人
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1東京大学大学院情報学環
pp.520-524
発行日 2000年12月25日
Published Date 2000/12/25
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筆者は作業療法を身体と環境とを繋ぐ仕事と考える.これまでの心理学は動物の周囲にある環境を理論に十分に取り込めなかった.James J. Gibson(1904〜1979)の生態心理学は,動物の周囲にあることについて独自な観点を示し,動物との関係で定義される環境の性質(アフォーダンス)が,動物の知覚—行為によって直接知覚されるとしている.本稿は,直接知覚の根拠が,ユニークな光の理論(生態光学)として成立するまでを簡単に振り返り,作業療法とアフォーダンスとの関連を議論する(ただし紙数に限りがあり多くの問題を扱えない.この領域の広がりについては注2の読書案内を参照されたい).
伝統ある感覚心理学が外界から網膜に入力するとした極小の刺激(光線)に代えて,環境にあることをそれだけで特定する,構造を持つ光の単位(包囲光配列),すなわち情報を発見して,Gibson理論は飛躍した.周囲の振動(音)や,化学放散(匂い)や,力学変形(接触)が,環境にあることを特定する情報になるという主張はそれほど意外ではない.向かってくる車の危険性が音でわかり,燃焼素材が匂いでわかり,見なくても持って振れば棒の形がわかる.この場合,煙や,音場の構造的変形や,棒の慣性が環境にあることを特定している情報である.では視覚での直接知覚はどのように可能なのか?理論はGibsonの3著作で次のように展開した.
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