焦点 看護研究におけるアフォーダンスの可能性
理学療法からみたアフォーダンス―その実践から看護への適用を考える
冨田 昌夫
1
,
杉山 智久
1
,
杉 優子
2
,
丹羽 志暢
2
1藤田保健衛生大学医療科学部
2藤田保健衛生大学病院リハビリテーション部
キーワード:
知覚循環
,
定位
,
発達
,
学習
,
適応
Keyword:
知覚循環
,
定位
,
発達
,
学習
,
適応
pp.559-572
発行日 2008年12月15日
Published Date 2008/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100347
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概論
行為をしようと構えたときに,対象となる物や環境には,私たちに動きの方向ややり方を誘導して,なんとなくできそうだと思わせてくれる情報が備わっている。できそうだとかできないと思わせてくれる環境や物に備わった情報のもつ意味や価値を,「アフォーダンス」と呼んでいる。生態心理学的な概念で行為をするということは,環境に能動的に働きかけて探索することで,そのアフォーダンスを見つけ出し,アフォーダンスに導かれて自分と環境の間に合目的な運動の秩序をつくりだすことである。これを「知覚循環」と呼んでいる。
現実に動作を行なう場合,環境のさまざまなアフォーダンスのなかにいくつもの選択肢があり,どれを選んでも動作ができてしまうようなとき,私たちは決して滑らかでスムーズな動作を行なっていない。動作を細かく分析してみると,行為の最中に運動の淀み(マイクロスリップ)を何回も繰り返して,そのとき選択すべき正解を探索し,折り合いをつけながら,その場で最も適応したやり方を見つけ出している。このように知覚循環に基づいて,多様な環境と相互依存的に秩序ある運動を生み出すことを「運動の自己組織化」と呼んでいる。多くの選択肢のなかから必要に応じて1つを選択できるようになることは,柔軟性が出るということである。
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