作業療法士が生きのびるために

はじめに

　与えられたテーマは「根拠に基づく作業療法」である．医学の世界を席巻している「根拠に基づく医療(EBM；evidence based medicine)の影響が，作業療法にも及んできたわけだ．

　このテーマに答えられる何をも私は持ちあわせていないのだが，執筆を引き受けてしまったのは，

　1．作業療法を生業とする者として，避けて通ってはいけない

　2．地域ケアの中であまりにも存在感の薄い作業療法の行く末を危惧するという，2つの理由による．

　私は訪問看護ステーションで非常勤で仕事をしている．言わば，末端の医療労働者で，情報や研究からもかなり遠いところにいる．だが現場に吹き荒れている介護保険の嵐はもろに受けており，いわゆる“通所リハビリ”“訪問リハビリ”と言う時の“リハビリ”の中で，作業療法士が何をしていくのかを明確に打ち出さない限り，誰も振り返ってはくれないのではないか，という瀬戸際にいる感じを持っている．