Japanese
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◆総説
痴呆性老人と作業療法—痴呆性専門病院での経験より
Occupational Therapy for Senile Dementia Patients
佐々木 健
1
Ken Sasaki
1
1きのこエスポアール病院
1Kinoko Espoire Hospital
pp.15-20
発行日 1992年2月15日
Published Date 1992/2/15
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はじめに
私は,1984年5月に痴呆性専門病院を開設し,現在まで多数の痴呆性老人に医療を通じて接する経験をもつことができた.そしてこの8年間をふりかえってみると,私自身の中で痴呆性老人に対する考え方が微妙に変化してきていることに気づく.
痴呆の人が示す,いわゆる問題行動にふりまわされた一年目.問題行動にふりまわされすぎて身体的対策が後手,後手となり,病院ケアは先ずその基本に身体ケアをきちっとしておく必要があるとわかった二年目.先ず,身体的ケアをきちっとおさえ,問題行動に対しては最大限の許容度をもってあたると決心した三年目.薬物療法もできるだけ向精神薬を排除する方向にし,患者の自由にまかせ,管理をゆるめて病棟内でのおさまりをみることができ,この方法にある程度自信をもった四年目.病棟内は平穏になり,患者も自由に生活しているように見えるが,何かが足りないと感じはじめた五年目.それは患者が自ら自分を表現する機会の提供であると気づいて,行雲覚醒表現療法を試みはじめた六年目.といったように,短い期間で私の考えも次第に変化してきた.
近年,老人を扱うさまざまの場所で,痴呆性老人の扱いが問題となっている.ところが,その焦点は,問題行動,異常行動への対処の仕方や援助といった所に偏りがちである.
今稿では,やや切り口を異にして,私が行っている作業療法を通じて感じる痴呆性老人に対する私の思いというものについて述べてみたい.もっとも,私は,リハビリ,作業療法については門外漢であるので焦点のずれたところもあるかもしれないが,専門家である読者のみなさんの何らかの参考になればと考えて書きすすんでいく.
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