◆特集 作業療法でとらえる対象者の問題
小児の作業療法について
山田 貞雄
1
1吹田療養園
pp.21-25
発行日 1984年8月15日
Published Date 1984/8/15
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はじめに
昨秋,中学生男子の脳性まひ(痙直型両麻痺)児が,術後の訓練のために当園に紹介されてきた。彼は,学校内の耐寒マラソン大会で見事完走することができたと,新聞に掲載されたこともあった。彼が最初に訓練室にやって来たのは,術後まだ間もない時で,看護婦に連れられてきた。「お前はもう用がない…。」と看護婦に汚ない言葉を投げつけるのを聞き,思わず彼の顔を見つめた。彼に服を脱ぐように指示すると,脱ぐのはいいのだが,脱ぎっぱなし,しかも四方八方に散らばったままである。二回目,母親と一緒に来た時も前回と同様,やはり脱ぎっぱなしであった。この時母親は何も言わず,散らばった衣服をごく当り前にたたみ,整理して一つのところに置いた。そばで見ていると,ごく自然に手慣れた所作で行なわれている。母親は自分が整理するのは当り前だと思っているし,子供もそうしてもらうのが当然のようであった。まるで第三者の口出しするすきがなかった。ところで,その後の子供の会話は「あの○○看護婦は生意気や,えらそうなことをいいやがって…。」「ここのめしなんかまずくて食えるか。」等々威勢のよい言葉が次々と飛び出してくる。それからあとも訓練の時間に遅れることがしばしばあり,みかねて病室に行くと,ふてくされて寝転んでいる。当然のことながら,看護婦の彼に対する評判はよくなかった。
中学生という時期を考慮に入れてもそれだけでは説明できないものがあった。
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