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当科では,領域別にそれぞれ臨床研究に取り組んでいるが,今回は運動器疾患に対する術後リハビリテーション治療に関連する研究を紹介する.近年の急速な高齢化により運動器疾患を有する高齢者が増加しており,進行すると要支援・要介護の危険性が高くなるため,その予防と適切な治療が重要である.移動能力低下をきたす主な変性疾患として,股関節や膝関節の変形性関節症や腰部脊柱管狭窄症などが挙げられ,当院においても,進行した症例に対して多くの手術治療を実施している.クリニカルパスに準じた周術期管理や術後リハビリテーション治療を実施しているが,術後リハビリテーション治療に関しては,後方支援病院と協力しながら機能回復に努めるとともに,並行して共同研究を進めている.
当科で変形性関節症に対して人工関節置換術を施行した308名(平均年齢71.2±9.2歳)を後ろ向きに検討し,転院後の回復期病院における入院期間に影響する因子の調査を行った.平均入院日数は37.2±21.6日,退院時の運動Functional Independence Measure(FIM)変化量は平均16.6±7.4であり,ほぼ全国平均と同等であった.入院期間に関連する因子をロジスティック回帰分析にて解析すると,入院時の運動FIMとTimed-Up and Go Testが有意に独立した因子であった(表1).以上の結果より,これらの因子が回復期病院での入院日数の予測やリハビリテーション治療計画に役立つことが示唆されたとともに,術後早期の身体機能向上が自宅退院時の良好な機能回復や入院期間短縮に影響する可能性が示され,急性期病院での術前介入を含めたさらなるリハビリテーション治療向上の一助としている.
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