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近年の超高齢社会の到来により,わが国では高齢者の数と割合が世界に類をみないスピードで増加している.今後,この傾向は少子化と相まって,さらに進むことが確実であることから,高齢者の健康寿命の延伸は喫緊の課題である.熊本県も県内全体でみると65歳以上の高齢者人口割合は令和元(2019)年の調査で31.1%と1),全国平均の28.4%2)を上回っており,熊本県内でも熊本市より地方の地域では高齢者人口割合はさらに高いことから,高齢者の健康長寿対策はきわめて重要な課題といえる.特に,高齢者の要支援や要介護化は家族のみならず,地方自治体の財政にとっても負担が大きいため,その対策のためには医療者のみならず地方自治体と連携した取り組みが必要である.
高齢者においては歩行能力の低下や握力の低下など,現在の能力の低下が将来の認知症発症や要介護化などのリスクとなり,健康寿命延伸の阻害因子となることが報告されていることから3, 4),熊本県では熊本県医師会などが中心となり,熊本市医師会などの各地区医師会,熊本県歯科医師会,熊本県薬剤師会,熊本リハビリテーション研究会など30以上の団体により熊本地域リハビリテーション支援協議会を設立し,熊本県内17カ所に地域リハビリテーション広域支援センターを配置(図1),市町村や介護サービス事業所などに対して,リハビリテーション治療・介護予防に関する技術支援などを行う他,各事業所管内の地域住民について開眼片脚立位時間,Timed Up and Go testや5m歩行能力テスト,握力計測などの運動能力や認知機能などの計測を行い,一般住民における基礎的な運動能力データの収集事業を実施してきている.健康寿命延伸のための対策を構築するためには,まず対象となる住民の基本データの取得がきわめて重要と考え,われわれ熊本大学リハビリテーション科もその一翼を担うべく,本事業に参加しているが,2020年は新型コロナウイルスSARS-CoV-2によるCovid19のパンデミックが発生し,全国のさまざまな施設で施設内クラスターの報告もあることから,活動が自粛されている状況にある.また,2021年は人の異動もあったことや,調査項目の再検討を行うこともあり,これまで実施してきたことを検証しつつ,新たな体制や内容で調査研究を発展させるべく取り組んでいるところである.
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