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本邦ではリハビリテーション医学講座のある大学は全体の半数もなく,リハビリテーション科を専攻する若い先生も少ないのが現状です.リハビリテーション科の今後の発展を考えると何らかの刷新の必要性が感じられます.ところで,今,最大の社会問題はコロナウイルス感染の拡大が収まらないことだと思います.コロナ対策として社会が待ち望んでいるのは,安全有効なワクチンの普及による感染対策で,社会への影響を最小限に食い止めるワクチンによる予防だと思います.また,近年,重きを置かれてきているメタボリックシンドローム,フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームなどに対する医療も,社会が直面している高齢化社会の医療問題を最小限に食い止める予防の医療といえます.さらに,2003年にヒトゲノム計画が終了し,ゲノム医療も現実のものとなりつつありますが,まだまだ越えなくてはいけない諸問題を抱えているとはいえ,ゲノム医療が現実化されれば,将来,われわれが患うことになる疾患の影響を最小限に食い止める予防が可能となります.医療の中で予防は非常に効率的な方策です.
この効率的な予防医療にリハビリテーション科がもっと関与してみるのはいかがでしょうか? リハビリテーション医療で診療報酬算定ができ,予防的な診療が一応可能な疾患分類は,がん,呼吸リハビリテーションに限られます.強いて挙げれば介護保険の要支援対象者への関与があるでしょうか? もちろん,リハビリテーション医療の神髄は原病の治療で生じた障害に対し,残された機能でいかに社会復帰させるかで,非常に重要で意義ある分野だと思います.しかし,運動療法が主な方策であるリハビリテーション科が,業務として成人病や認知症の予防の領域にも踏み込められれば,例えばこれらの疾患に対する食事療法や運動療法を採り上げたテレビ番組の世間への反響が大きいことをみても,より社会でのリハビリテーション科に対する認識が,また若い先生方の関心が高まりはしないでしょうか? また,私はリハビリテーション部に移動する以前は膝関節外科医で,スポーツ外傷に多い膝靱帯損傷の手術に主に携わっていました.医学生や若いドクターのスポーツ医学に対する関心の高さを肌で感じています.医学生や若いドクターは手術だけでなく,スポーツドクターとして試合に同行して活躍することを志す者も多いです.そのスポーツ現場ではスポーツ外傷や障害のやはり予防が大きな比重を占めています.運動療法が主体のリハビリテーション科が深く踏み込める分野ではないでしょうか?
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