第4回 リハビリテーション科専門医会 学術集会/諏訪 《シンポジウム》摂食・嚥下の運動学―座長/石井 雅之・藤谷 順子
摂食・嚥下器官の構造
井出 吉信
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1東京歯科大学解剖学講座
pp.683-690
発行日 2010年10月18日
Published Date 2010/10/18
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はじめに
近年,加齢にともなう摂食・嚥下機能低下の全身に及ぼす影響が問題となっている.摂食・嚥下に関与する器官の中で最初に食物が入る口腔は,食物に関する情報をキャッチし,唾液を分泌,咀嚼運動を介して食塊形成を行う重要な場である.口腔内に食物が取り込まれると咀嚼筋,表情筋,舌筋などの筋群の働きにより咀嚼が開始し,歯によって食物は粉砕され,唾液と混和される.この際には,上・下顎の歯ですりつぶされた食物を頬側の口腔前庭に落ちないように頬筋と舌筋が協力して歯列の上に乗せることにより食塊が形成される(図1).咀嚼は,複数の器官が連携して推進される.咀嚼が不十分であると次の段階の嚥下が円滑に行われない.
以上のことを踏まえ,摂食・嚥下の一連動作がスムーズに行われるメカニズムを理解するために,口腔(口腔粘膜・唾液腺・顎骨・歯),咽頭,喉頭の基本構造および加齢に伴う変化について口腔解剖学の立場から述べる.
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