第46回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/静岡 《シンポジウム》包括的リハビリテーションにおけるリハ科医の役割―座長/上月 正博・谷 俊一
ハイリスクなメタボリックシンドロームの包括的リハビリテーションにおけるリハ科医の役割
伊藤 修
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1東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野
pp.214-218
発行日 2010年4月18日
Published Date 2010/4/18
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はじめに
メタボリックシンドロームは,肥満(内臓脂肪蓄積)という共通の病態を基盤として,インスリン抵抗性(耐糖能異常),動脈硬化惹起性リポ蛋白異常(脂質異常),血圧高値(高血圧)を重積し,粥状動脈硬化に基づく虚血性心疾患や脳血管障害の発症リスクが増大する症候群である.わが国の診断基準は表1に示すように,ウエスト周囲径が男性85cm以上,女性90cm以上を必須項目とし,加えて脂質異常(トリグリセライド150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール40mg/dl以下),収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上,空腹時血糖110mg/dl以上のうち2つ以上重なった場合にメタボリックシンドロームと診断するものである1).
2004年国民健康・栄養調査によると,わが国のメタボリックシンドロームの有病状況は,「強く疑われる者」の割合が成人男性23.0%,成人女性8.9%であり,「予備群と考えられる者」の割合が成人男性22.6%,成人女性7.8%である.年齢と共に有病率は増加し,40~74歳でみると,男性の2人に1人,女性の5人に1人がメタボリックシンドロームの「強く疑われる者」または「予備群と考えられる者」である.
このような高い有病率のメタボリックシンドローム患者すべてにリハビリテーション(以下,リハ)科医が関与することは現実的には不可能と考えられるが,通常の運動療法の実施が困難であり,リハ科医による関与が是非必要と思われる症例も少なくない.したがって本稿では,ハイリスクなメタボリックシンドロームの診療に関して,リハ科医の役割を考察すると共に,包括的リハの実際を紹介する.
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