特集1 はじめての抗精神病薬「副作用」マニュアル 中編
➂内分泌代謝系
メタボリックシンドローム
長嶺 敬彦
1
1吉南病院(内科)
pp.27-29
発行日 2005年9月1日
Published Date 2005/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100138
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メタボリックドミノをイメージしよう
抗精神病薬による副作用と、肥満、糖尿病、高脂血症といった内分泌代謝系との関係は、今、非常に注目されています。内分泌代謝系の異常は、重大な心血管系イベント、つまり突然死のリスクになるわけです。肥満も高脂血症も糖尿病も急に発症することは少なく、徐々に水面下で代謝系の異常から起きてきます。循環器系の異常のように、急に出現し痛みや動悸でも伴えばその病態を認知しやすいのですが、代謝系の異常は見えないところからじわじわと近寄ってくるので、その意味では不気味です。無症状のうちから内分泌代謝系のリスクを目に見える形で把握しておくためにも、体重測定や血液検査が重要になります。
肥満、糖尿病、高脂血症……これらの心血管イベント発症の危険因子が重積しやすいことを示す概念に、「メタボリックシンドローム」というものがあります(図1)。心血管イベントの危険因子は互いに関連し、共通病態として「インスリン抵抗性」★1*1があることが指摘され続けてきました。WHOがこのインスリン抵抗性の代謝障害を「メタボリックシンドローム」と呼ぶことを提唱し、日本でも2005年に、日本人の身体に即した診断基準を設けたのが図1になります。この概念は、何らかの内分泌代謝系の異常をみたときに、例えば肥満があったら糖尿病も疑うといったように、インスリン抵抗性という基本病態に配慮し、生活習慣も含めた治療を行なう必要性があることを明確に示したところに意義があります。
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