ひとやすみ・26
メタボリックシンドローム
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.69
発行日 2007年10月22日
Published Date 2007/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101886
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- 文献概要
現代の日本は飽食の時代であり,食べ物はいつも身近に溢れ,食する機会が多い.また,テレビを見れば「食」と「旅」が定番であり,「食」をテーマとした雑誌は本屋における最大の売れ筋でもある.しかし,人類400万年の歴史を紐解くと,つねに飢餓との戦いであった.人類は食べることに汲々とし,少ない食事摂取量でも生命を維持できるDNAを優性遺伝して受け継いできた.一方,いくら食べても太らない遺伝子は種の維持が困難なため劣性遺伝子とされてきた.しかしながら,この劣性遺伝子はいまや糖尿病や高脂血症に罹患しがたい優良遺伝子でさえある.
そもそも人類には飢餓に備え,食べられるときに食べておく摂食行動がセッティングされている.バイキングではここぞとばかりに皿に食べ物を盛る.デパートの地下では試供品の食べ物に舌鼓みを打ち,スーパーマーケットでは目玉商品を見つけては籠に入れる.そして,賞味期限が切れそうになると,もったいないと思ってはゴミ箱代わりに口に入れる.かくしてご先祖様から受け継いだ優良遺伝子(現在の日本では不良遺伝子)の働きにより,内臓や皮下に脂肪が蓄積することになる.そして今や40歳以上の日本人の1割が糖尿病もしくは糖尿病予備軍である.
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