第46回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/静岡 《先端シンポジウム》Brain Machine Interfaceはリハビリテーションに何をもたらすか―座長/生駒 一憲・富田 豊
Brain Machine Interface:基礎神経科学から臨床応用へ
伊佐 正
1,2,3
1自然科学研究機構生理学研究所発達生理学研究系認知行動発達機構研究部門
2科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST)
3総合研究大学院大学生命科学研究科
pp.98-104
発行日 2010年2月18日
Published Date 2010/2/18
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はじめに
Brain Machine Interface(以下BMI)は一般には,脊髄損傷は脳梗塞などで肢体不自由になった患者の四肢の機能を代行するための外部機器の操作を遂行するためのシステムと考えられている.しかし一方で,ある程度の機能回復が見込める患者について,BMIを神経リハビリテーション(以下,神経リハ)を促進するためのシステムとして活用する可能性を追求することは大変有意義である.脊髄損傷・脳卒中などの中枢神経損傷後に,一時的に機能が低下した運動機能が訓練によりある程度は回復し得ることが経験的によく知られているが,どこまで「残存する神経回路」の機能を促進できるかの見たてを的確に行うためには,機能回復の脳内メカニズムに対する深い理解が必要不可欠である.
近年,筆者らはマカクザルを用いて頸髄レベルで皮質脊髄路を選択的に損傷した後,指の巧緻運動が回復する動物モデルを作成し,陽電子断層撮影法(Positron Emission Tomography:PET)を用いて機能回復の過程での脳活動の変化を可視化することを試みた.さらに薬物の局所注入による可逆的機能ブロック法を用いて,可視化された活動変化の機能的意義を検証する研究を組み合わせることで,脊髄損傷後の手指の器用さの回復を支えている神経メカニズムについて研究を行っており,本稿ではその成果について概説し,今後BMIを神経リハに活用するための基礎研究の方向性について論じたい.
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