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はじめに
筆者は2002年の本医学会シンポジウムにおいて,末梢循環障害による高齢下肢切断者のFunctionalOutcomeと題して当科の下肢切断者の疫学的調査結果および,大腿切断者の症例比較検討結果を報告した.1968年から1984年までの17年間と1985年から1995年までの11年間を比較したところ,全切断者は前期が120名,血管原性切断(閉塞性動脈硬化症および糖尿病性切断)は38名,後期はそれぞれ114名,35名であり,全切断者に占める血管原性切断の割合は前期31.7%,後期30.7%と有意の差は認めなかった.また,前期大腿切断者は18名,下腿切断者は20名,後期はそれぞれ19名,16名であり,下腿切断と大腿切断の比率も前後期で有意な差は認めなかった1).
両期間の義足装着のアウトカムについては,日常生活で実用的に義足を使用している例は前期の大腿切断者で8%,下腿切断者で100%,後期の大腿切断者で9%,下腿切断者で80%という結果であった.この結果は1985年のSteinbergら2)の,4年間59名の下腿切断者と22名の大腿切断者の退院後の義足装着状況の調査で下腿切断者の73%,大腿切断者の50%が常時義足を装着していたとする報告,また,1995年のChristensenら3)の,2年間で義足装着訓練を行い退院した29名の退院後10カ月の調査で,下腿切断者18例中17例,大腿切断者10例中7例が毎日義足を使用していたとする報告と比較すると,下腿切断では同程度,あるいはそれより成績が良いという結果だが,大腿切断については義足歩行獲得率が著しく低いということになる.
しかしながら,当科では調査期間で下肢切断を行った全例を対象としているのに対し,欧米の報告では,義足装着のために入院適応となった症例を対象としているため,入院時に大変厳しい条件で患者選択がなされていたということを差し引いてデータを比較しなければならない.Fletcherら4)も同様の指摘をしており,全切断者を対象にすれば,大腿切断者の義足歩行獲得率は14.5%であったと報告している.
当科における高齢大腿切断の症例検討からの結論は,1)大腿切断者の義足歩行訓練には大変な時間と労力を要する,2)合併症の重症度,片足立ちバランス,本人の意欲などが義足処方の判断材料となる,3)大腿切断者の義足歩行訓練を行うには費用対効果の観点からの検証も必要である,の三点であった1).
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