第44回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/神戸 《パネルディスカッション》高齢者切断の義肢-処方の実学-―座長/赤居 正美・陳 隆明
高齢下肢切断者のリハビリテーションの実際と近年の傾向について
陳 隆明
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1兵庫県立総合リハビリテーションセンター
pp.331-334
発行日 2008年6月18日
Published Date 2008/6/18
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下肢切断原因の近年の動向
近年では外傷や腫瘍による切断は減少し,閉塞性動脈硬化症(以下ASO)や糖尿病に起因した末梢循環障害による切断が増加している.日本において,下肢切断原因について全国的に行った調査は皆無であるが,これまでに澤村らの兵庫県下の調査1),林らの大阪府下での調査2),さらに武智や長島らの岡山県下の調査3)などが散見される.これらの報告を総括すると,近年の日本における下肢切断原因は末梢循環障害が増加し,全切断原因の60%以上を占め,しかもその原因疾患のほとんどがASOと糖尿病である.切断時年齢も60歳以上が大半である.この傾向は日本のみならず,アジア諸国においても同様である.台湾の調査によれば4),切断原因の72%は末梢循環障害であり,切断者の平均年齢は60.7歳であった.香港の調査では5),切断原因の63.6%は末梢循環障害であり,切断者の平均年齢は74.1歳であった.
欧米では,下肢切断の約70%は65歳以上の年齢で起こっており6),高齢人口における切断原因の90%は末梢循環障害である6,7).日本はすでに高齢化社会に直面しており,65歳以上の高齢者が総人口に占める割合は2050年には30%を超えるとの試算がある.65歳以上の人口が25%を占める兵庫県淡路島における橋本の調査8)によると,切断原因の85.7%が末梢循環障害であった.日本の将来を暗示する興味深い調査である.
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