特集 高齢下肢切断の理学療法
高齢下腿切断の理学療法の現状と課題
島津 尚子
1
,
上杉 上
1
,
水落 和也
1
,
畠中 泰司
2
Naoko Shimazu
1
1横浜市立大学附属病院リハビリテーション科
2徳島文理大学保健福祉学部理学療法学科
pp.1073-1079
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102651
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はじめに
高齢化や生活様式の変化に伴い高齢の下肢切断者が増加し,その中でも血行再建術や切断術の技術の進歩,膝関節機能の温存への意識の高まりにより,下腿切断の割合が増加している.下腿切断者は膝関節機能が温存されるため,高齢下肢切断者の中でも比較的歩行を再獲得できる場合が多い1).そこで本稿では,高齢下腿切断者における理学療法を施行するうえでの問題点や留意点,義足処方や装着の工夫,退院時の指導,フォローなどについて報告する.
下肢切断の原因として近年割合が増加しているのが末梢循環障害による切断で,外傷性,腫瘍と続く.血管原性切断では全身の動脈硬化に基づく筋力低下や体力低下を伴っていること,また悪性腫瘍による切断の場合には切断術と並行し化学療法や放射線療法などを施行することも多く,これらの副作用による血球減少などの全身状態の低下を併発することがあるため,全身状態に配慮したリハビリテーションの実施が不可欠である.
さらに,高齢者では原疾患や合併症による機能低下2)のベースに,加齢による機能低下が伴っていることを忘れてはいけない.加齢現象とは緩やかに進行する器官の機能低下とホメオスタシス機能の低下であり,最大努力・最大ストレス時にみられる器官の予備力の低下,環境変化への適応力の低下,ストレスに対する反応性の低下と言われており,その結果として疾病や外傷を受けやすくなる3).切断術後の機能としては,術前の生活レベル以上の能力を獲得することは難しいため,切断術前の運動機能,生活レベルを把握することは,ゴールを設定するうえでも重要である.
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