言語聴覚研究優秀論文賞
第3回言語聴覚研究優秀論文賞を受賞して
福岡 達之
1,2
1兵庫医科大学病院リハビリテーション部
2兵庫医療大学大学院医療科学研究科摂食嚥下リハビリテーション学
pp.58-60
発行日 2013年7月15日
Published Date 2013/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.6001100358
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このたびは,第3回言語聴覚研究優秀論文賞を賜り大変光栄に存じ,心より感謝申し上げます.また,ご選考いただきました諸先生方には改めて深謝いたします.
本研究は,私が兵庫医科大学ささやま医療センターに在籍していたとき,嚥下障害の臨床において感じていた疑問が発端でした.すなわち,嚥下機能の評価項目は様々ありますが,嚥下障害を有する患者の多くに随意的な咳嗽能力の低下が認められます.咳嗽は気道内の異物や分泌物を排出するための生体の防御反応であり,嚥下障害患者では,喉頭内に侵入または誤嚥した唾液や食物を排出するのに重要な機能と考えられます.咳嗽の評価は,気道防御の感受性をみる知覚的側面と咳嗽の強さをみる運動的側面の両面から行うことができます.咳嗽の知覚的側面を評価する方法としては,クエン酸などの薬剤をネブライザーで吸入させて咳反射の惹起性を観察する咳テストが知られており,肺炎発症のリスク評価や不顕性誤嚥のスクリーニングに有用であることが報告されています.一方,咳嗽の運動的側面を評価する方法としては,咳払いの強さを主観的に評価する方法やピークフローメータを用いたPeak Cough Flowの測定がありますが,得られた評価と嚥下機能との関連については未だ明らかにされていません.また,随意的な咳嗽は,主に誤嚥物の喀出能力として評価される場合が多いですが,嚥下障害の重症度や誤嚥との関連について検討した研究は少ないのが現状です.
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