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論文「脳損傷急性期における言語障害スクリーニングテストの開発」が受理されるまでに,いったいどれほどの時間とエネルギーを費やしたことでしょうか.特に本論文は私にとって初めての執筆でしたので,執筆の過程に要する努力は途方もなく感じ,その結果として本当にこの研究は前に進んでいるだろうか,そもそもこのテーマは研究として成立するだろうか,とわからなくなり不安になりました.多くの先生方に助けられ,この検討を何とか諦めることなく続けてこられました.それだけに,ようやく『言語聴覚研究』に論文が掲載されたときには,それまでの苦労が吹き飛ぶような,今までには感じたことのない達成感に包まれたことを思い出します.そして,このたびこのように名誉ある賞を受賞できたことを,大変嬉しく思っております.
本論文は,脳損傷後の言語障害スクリーニングテスト(Screening Test for Aphasia and Dysarthria:以下,STAD)について検討したものです.検討を始めた切っ掛けは,私がかつて新人の頃,脳卒中患者に対するスクリーニングとして,何をどのようにするのかわからずに悩んでいたという経験からです.当時の職場の上司である国立国際医療センター,藤谷順子先生から「スクリーニングをテーマにして検討してみてはどうか?」と背中を押していただき,2003年の音声言語医学会(茨城)において本研究を初めて報告しました.書籍を参考に,急性期から用いられる試案Ⅰを作成した,という内容のものでした.当時は研究のイロハもわからず,発表は惨憺たるもので,フロアからは厳しい指摘を受けました.緊張のあまり,そのときどんな指摘をされたのか覚えていませんし,まったくつじつまの合わない返答をしたのではないかと思います.発表後に藤谷先生からは,発表の制限時間内に収まったことだけは褒められました.2004年第5回言語聴覚学会(神奈川)にて,試案Ⅱの評価者間信頼性と看護師へのアンケート結果を発表しました.かせだクリニックで勤務する経験を得て,同クリニックの上司,宇野園子先生にご協力いただきながら,2005年北里大学同窓会にて,改訂版Ⅲを報告しました.
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